東京大学医学部放射線医学教室―多様性を推進力に―

第85回日本医学放射線学会総会受賞報告

投稿者: 黒川遼, 白田剛, 丹生谷啓介, 福田一成, 八坂耕一郎 / 投稿日:
2026年4月16日(木)〜19日(日)に第85回日本医学放射線学会総会(https://site2.convention.co.jp/jrs85/、大会長:当教室 阿部修教授)では、当教室からも多くの医局員が座長・演者にて参加し、最優秀賞を含む受賞もありました。4名の先生方受賞誠におめでとうございます。今後さらなるご活躍を祈念しております。

若手研究奨励賞(Young Investigator Awards)1位:丹生谷啓介先生(東京大学)

【演題名】院内成人死亡例における死後CTの診断能:12年間486症例の前向き研究

【演者】丹生谷啓介,白田剛,五ノ井渉,和田智貴,渡邉祐亮,戌亥章平,藤本幸多朗,黒川真理子,沖元斉正,片山僚,阿部浩幸,牛久哲男,阿部修,石田尚利

【概要】成人院内死亡例において、死因判定における死後CTの診断性能を評価することを目的とした前向き研究です。当教室と東京大学病理学教室により実施されてきた死後CTおよび病理解剖に関して、12年間に及ぶ成人院内死亡例486例の世界最大のコホートを対象としました。原死因および直接死因について剖検と死後CTの全体の一致率を、直接死因について疾患カテゴリー(感度は44診断群)ごとの死後CTの診断能を解析しました。一致率は原死因86.6%(421/486)、直接死因60.5%(294/486)でした。直接死因別には、頭蓋内出血で100%(18/18)と有意に高感度であった一方、多臓器不全(他に分類可能なショックや進行腫瘍は除かれている)では35.1%(13/37)で有意に低感度でした。特異度は、構造的な理由もありますが、全診断で94%~100%と高値でした。本研究は、成人院内死亡における死後CTの死因判定における有用性の再確認及び、診断ごとにその有用性が異なることを示し、臨床利用への一助となるエビデンスを提供しました。

【受賞者からのひとこと】

この研究は、東大で死後CTに関わった皆様の長年の蓄積のお陰で生まれました。今回、たまたま私の名前ですが、実態はチームとして頂いた賞と考えています。発表にあたり多大なるご指導を賜りました阿部教授、五ノ井先生、白田先生、石田先生をはじめとする先生方皆様に心より御礼申し上げます。

【共同演者からのひとこと】

当教室と東京大学病理学教室の協力のもと、2009年から実施されてきた死後CT研究の集大成です。膨大なデータを見事にまとめあげ、強固なエビデンスを築いてくださった丹生谷先生に心より感謝と敬意を表します(白田)。

イメージ・インタープリテーション第2位:福田一成先生(帝京大学)

今大会のイメージ・インタープリテーション「チャンピオン達からの挑戦状」では、Radiology誌Diagnosis Pleaseの世界王者の先生方が出題者、日本医学放射線学会総会・秋季臨床大会の王者の先生方が回答者で、座長は当教室の黒川遼先生(東京大学)が竹田太郎先生(松波総合病院)と二人で務めました。歴代でもかなり多い155名もの応募者の中で、当教室医局員の福田一成先生(放射線科(一次)専門医取得前!)が第2位となる快挙がありました。

【受賞者からひとこと】

昨年に引き続き受賞することができ大変光栄です。日常診療や勉強会で日頃よりご指導下さっている先生方に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。今回解けなかった1問から得た課題とも向き合い、より一層精進して参ります。今後ともご指導のほど、何卒宜しくお願い申し上げます。

JJR優秀論文賞:八坂耕一郎先生(東京大学医科学研究所附属病院)

【受賞論文の概要】

画像診断では、病変と健常部とのコントラストが明瞭であるほど、病変の検出は容易です。胸部CTにおいては、肺癌は健常肺とのCT値差が大きく、比較的検出がしやすいです。一方で、乳癌や食道癌は健常部とのコントラストが肺癌ほど高くはありません。

CT検査は医療現場において実施頻度の高いモダリティですので、偶発的に存在する乳癌や食道癌の検出感度向上を目的として、今回の研究を行いました。

近年、画像やテキストといった複数のデータ形式を統合的に扱うことのできるlarge multimodality model (LMM)/ visual language model (VLM)が注目されています。本研究では、その一つであるBLIP-2に対し、乳癌および食道癌のCT画像に病変の有無をテキストでラベル付けしたデータを用いて教師あり深層学習を実施しました。

その結果、学習済みモデルは乳癌を92.9%、食道癌を95.1%の感度で検出することができました。一方で、特異度は十分に高いとは言えず、病変のない症例においても病変ありと判定するケースが認められ、今後の検討課題と考えています。

【ひとこと】

JJR優秀論文賞という栄えある賞をいただき、大変光栄に存じます。ご指導賜りました阿部先生、研究にご協力いただいた先生方、ならびに本賞の選考および論文査読にご尽力いただいた先生方に、心より御礼申し上げます。今後とも一層精進してまいります。

JJR研究継続奨励賞:黒川遼先生(東京大学)

【受賞内容】

JJR研究継続奨励賞は、Japanese Journal of Radiology誌に継続的に良質の論文を執筆したことを賞するものです。「応募時において45歳未満の日本医学放射線学会会員であり、過去3年間の間に、JJRにFirst AuthorもしくはCorresponding Authorとして複数(できれば3編以上)の論文を掲載していること(原則、原著論文を対象とするが、1編は総説でも可)」という厳しい応募条件をクリアした応募者の中から、厳正なる審査の上で選出されます。

【ひとこと】

この度は、2024年の2本(PMID: 38954192, 39096483)+2023年(PMID: 37010787)にJJRに掲載された筆頭論文(合計引用数 240)にて、JJR研究継続奨励賞にご選出いただき、大変光栄に存じます。 共著者の先生方、審査員の先生方、本当にありがとうございました。今後も研究を継続してまいります。

また今大会では、私と妻で医局員の黒川真理子先生の二人でお手伝いした森紘一朗先生(東京都立駒込病院)の教育演題が最優秀教育演題賞(1st)に選出されました。こちらも大変嬉しく、お忙しい中で審査をしていただいた先生方、森紘一朗先生を始めとする共同演者の先生方に感謝申し上げます。