画像診断ナショナルデータベース実現のための開発研究
1. 臨床研究について
東京大学医学部附属病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「臨床研究」といいます。その一つとして、東京大学医学部附属病院では、現在全CT検査施行患者さんを対象として、CT画像検査および診断レポートに関する「臨床研究」を行っています。
今回の研究の実施にあたっては、東京大学医学部倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2022年6月30日までです。
2. 研究の目的や意義について
全国の医療機関で撮影された医療画像データは、原則的にはそれぞれの医療機関内のみで運用されているため、お互いの病院の画像を参照したり、活用したりすることは困難です。本研究では、将来的に他の医療機関の医療画像を見ることができるようなシステム作りを目指しています。まずは代表的な複数の医療機関のCT画像と診断レポートを匿名化した上で、セキュリティの高いネット回線を経由して、九州大学内のサーバーに保存します。このデータを活用して、医学研究(具体的には、CT被ばく線量解析や人工知能(A.I.)を用いた自動診断の開発、画像の定量化)を行なう予定です。
3. 研究の対象者について
2018年9月1月から2022年6月30日までに、東京大学医学部附属病院の放射線部で行われる全てのCT検査(年間約48000検査)が対象です。
なお、本研究は、他の連携医療機関との共同研究です。他の施設の対象となる検査数は、
- 九州大学 年間 約43000件
- 順天堂大学 年間約62000件
- 慶応義塾大学 年間約66000件
- 大阪大学 年間約47000件
- 岡山大学 年間約36000件
- 国立国際医療センター国府台病院 年間約8000件
- 京都大学病院 年間約68000件
- 国立国際医療研究センター 年間約32000件
全施設を含めると、年間410000検査が対象となります。
4. 研究の方法について
この研究を行う際は、病院内のPACSサーバー(=画像を保存している装置)およびレポートサーバー(=レポートを保存している装置)より、以下の情報を取得します。
〔取得する情報〕
- CT画像(CT線量、画像取得日時、年齢、性別、体重、病変の位置や診断の情報を含みます)
- CTの画像診断レポート(CT所見欄および診断結果欄および矢印などの印を付した添付画像)
(IDはデータ送信時に加工し、個人が直ちに特定されないような処置を行います)
- 東京大学では上記のデータを使用し、人工知能による画像診断支援の開発を行う予定です。
- 九州大学に上記のデータを提供し、全国的なデータベースを構築します。
- 大阪大学に上記のデータを提供し、CT被ばく線量についての解析を行う予定です。
- 慶応義塾大学および国立情報学研究所、九州大学・順天堂大学・国立国際医療研究センター・名古屋大学・九州大学、大阪大学、岡山大学、京都大学へデータを提供し、人工知能による画像診断支援の開発を行う予定です。
- 順天堂大学へデータを提供し、画像定量化のための研究を行う予定です。
なお、東京大学だけではなく、他の連携医療機関のCT画像およびレポートについても、同様に画像やレポートデータを収集し、詳しい解析を行う予定です。
5. 個人情報の取扱いについて
対象となるCT画像および診断レポートについては、研究対象者が特定できる情報を完全に削除して取り扱います。この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、東京大学放射線科・教授・阿部 修の責任の下、厳重な管理を行います。
また、CT画像および診断レポートを大阪大学病院、国立情報学研究所、慶應義塾大学、東京大学、順天堂大学、国立国際医療研究センター、名古屋大学、九州大学、岡山大学、京都大学へ提供する際には、東京大学にて上記の処理をした後に行いますので、研究対象者を特定できる情報が外部に送られることはありません。
6. 情報の保管等について
この研究において得られた研究対象者の情報(CT画像およびCTの画像診断レポート)は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、研究主幹施設である九州大学大学院医学研究院放射線科学分野において、同分野教授・本田 浩の責任の下、10年間保存した後、データの消去を行います。
また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
7. 研究に関する情報や個人情報の開示について
この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
8. 研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
- 研究実施場所(分野名等)
- 九州大学病院放射線部
- 研究責任者
- 九州大学大学院医学研究院 臨床放射線科学分野・本田浩
- 研究分担者
- 九州大学大学院医学研究院 臨床放射線科学分野・准教授 西江昭弘
- 九州大学病院放射線部 講師 柿原大輔
- 共同研究施設及び試料・情報の提供のみ行う施設
- ① 順天堂大学大学院医学研究科/教授・青木茂樹(情報の収集・解析)
- ② 岡山大学病院医療情報部/教授・郷原英夫(情報の収集・解析)
- ③ 慶応義塾大学医学部/教授・陣崎雅弘(情報の収集・解析)
- ④ 大阪大学大学院医学系研究科/教授・富山憲幸(情報の収集・解析)
- ⑤ 国立国際医療研究センター国府台病院/科長・待鳥詔洋(情報の収集・解析)
- ⑥ 東京大学大学院医学系研究科/教授・阿部修(情報の収集・解析)
- ⑦ 京都大学医学研究科/教授・富樫かおり(情報の収集・解析)
- ⑧ 国立情報学研究所/教授・合田憲人(解析)
- ⑨ 東京大学/教授・喜連川優(解析)
- ⑩ 名古屋大学/教授・森健策(解析)
- ⑪ 九州大学/教授・内田誠一(解析)
- ⑫ 国立国際医療研究センター/放射線管理室長・放射線診療部医長・野口智幸(情報の収集・解析)
所在地:東京都港区西麻布2-26-30 富士フイルム西麻布ビル
9. 相談窓口について
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、事務局までご連絡ください。ご自身のデータをこの研究に使用されることを拒否される場合は、東京大学医学附属病院の担当者までご連絡ください。患者さんご自身に意識がない場合、判断能力がない場合、あるいは未成年の患者さんの場合は保護者の方、ご家族の方が代理で拒否の意思を表明することもできます。
その他、東京大学医学部附属病院の患者さんでご自身の情報についてご心配なことがある場合は東京大学医学部附属病院担当までご連絡ください。
◆事務局(相談窓口)
- 担当者
- 九州大学病院放射線部 講師 柿原 大輔
- 連絡先
- TEL: 092-642-5695(内線3308)
- FAX: 092-642-5708
- E-mail: kakky@radiol.med.kyushu-u.ac.jp
◆東京大学医学部附属病院の担当
- 担当者
- 東京大学医学部附属病院放射線科 講師 渡谷 岳行
- 連絡先
- TEL: 03-5800-8666
- FAX: 03-5800-8935
- E-mail: watadat-tky@umin.ac.jp