受賞報告
最優秀賞:萩原彰文先生(順天堂大学准教授)
【演題名】 IDH野生型膠芽腫における反対側のNeurofluidの動態に基づく予後推定 【演者】 萩原彰文、内田航、小澤拓也、高林海斗、鄒芯、Christina Andica、菊田潤子、明石敏昭、和田昭彦、青木茂樹、鎌形康司 【概要】 本研究では、IDH野生型膠芽腫において、腫瘍対側の正常外観白質におけるneurofluidの動態が予後と関連するかを検討しました。 拡散MRIを用いたDTI-ALPS法およびfree water解析を用いて脳内血管周囲腔の水拡散能および細胞外水分量を定量評価し、大規模公開データセット(UPENN-GBM、UCSF-PDGM)において検証を行いました。その結果、腫瘍対側のALPS index低値およびfree water高値が独立した予後不良因子となることが示され、腫瘍容積とは独立した新たな非侵襲的バイオマーカーとなる可能性が示唆されました。
なお、本研究内容は下記の通り論文として公表されております。 Hagiwara A et al. Contralateral Neurofluid Dynamics Predict Survival in IDH Wild-type Glioblastoma: A DTI-ALPS and Free Water Imaging Study. Neuro Oncol. 2025 [Epub ahead of print].
【ひとこと】 本研究は、腫瘍そのものだけでなく、腫瘍の影響が及ぶ脳全体の環境変化に着目した点に意義があると考えております。 日頃よりご指導・ご支援いただいている先生方および共同研究者の皆様のお力添えの賜物であり、心より感謝申し上げます。 今回の受賞を励みに、今後も神経放射線学の発展に貢献できるよう精進してまいります。

優秀賞:神澤純先生(大学院生)
【演題名】 脈絡叢体積はアルツハイマー病遺伝的リスクと認知機能の関連を媒介する 【共同演者】 神澤 純、鄒 蕊、高林 海斗、Christina Andica、萩原 彰文、菊田 潤子、青木 茂樹、鎌形 康司、阿部 修 【概要】 ポリジェニックリスクスコア(PRS)は、多数の遺伝子変異の効果を統合することで、個人の遺伝的リスクを定量化する指標です。アルツハイマー病におけるPRS(ADPRS)が、臨床症状発症前の脳構造変化や認知機能にどのように関連するかについては、これまで十分に明らかにされていませんでした。 本研究では、UK Biobankに登録された臨床症状のない成人36,400名を対象に、ADPRSとneurofluid clearanceに関連するMRI指標(脈絡叢体積および白質自由水)ならびに認知機能スコアとの関連を検討しました。その結果、ADPRSは脈絡叢体積の増加と有意に関連していることが示されました。さらに、脈絡叢体積はADPRSと認知機能との関連を部分的に媒介することが明らかとなりました。 これらの結果は、脈絡叢体積がアルツハイマー病の発症前段階における脳内変化を捉える早期バイオマーカーとして有用である可能性を示唆しています。 【ひとこと】 本発表にあたり、終始熱心なご指導を賜りました鎌形教授をはじめ、順天堂大学の先生方に心より感謝申し上げます。

優秀賞:大泉雄司先生(大学院生)
【演題名】 皮質下白質のFLAIR 信号低下を含む標準的MRI によるIDH 変異成人型びまん性グリオーマ鑑別能の検討 【演者】 大泉 雄司、黒川 遼、渡邉 祐亮、黒川 真理子、高見 浩数、北川 陽介、野村 昌志、齊藤 延人、阿部 修 【概要】 Astrocytoma, IDH-mutant (AST) とOligodendroglioma, IDH-mutant and 1p/19q-codeleted (ODG) の鑑別において、皮質下白質に限局したFLAIR低信号域 (scFLAIR-D) がODGに特異的であることと、従来のpartial T2-FLAIR mismatch signからscFLAIR-Dを除外するとASTへの特異度を保ちつつ、感度が改善することを示した。
なお、本研究内容は下記の通り論文として公表予定です。 Ohizumi Y, et al. Conventional MRI/CT for differentiation of IDH-mutant adult-type diffuse gliomas: Revisited with a new imaging feature "scFLAIR-D". Jpn J Radiol. in press 【ひとこと】 この度は共同演者の先生方のご指導のおかげで栄誉ある賞を頂けました。深く感謝申し上げます。今後も一層研究に取り組んで参ります。
参加報告
セクションプロデューサー、教育講演演者:黒川遼先生(助教)
【概要】 今回の日本神経放射線学会では、初の試みとして実行委員会に替えてセクションプロデューサー制が施行されました。各セクションに1名ずつのプロデューサーが任命され、セクション内容を企画・監修しました。 IVR 高山 勝年 先生(高井病院 脳神経・IVRセンター) ダイバーシティ&インクルージョン 山本 憲 先生(順天堂大学 健康データサイエンス学部) イメージインタープリテーション 黒川 遼 先生(東京大学 医学部附属病院放射線科) インフォマティクス 伊藤 倫太郎 先生(名古屋大学 革新的生体可視化技術開発産学協同研究講座) 私は「今までにないイメージインタープリテーション(以下、イメプリ)」という副会長の田岡俊昭先生からのご依頼を受け、史上初の「施設対抗での予選-本選形式」のイメプリを企画しました。日常診療で診断困難症例に遭遇すると、先輩後輩たちとディスカッションして考察を深めていくのが私たち画像診断医です。イメプリにその要素を取り入れるべく企画しました。予選5症例+本選3症例の出題および解答解説もすべて私が用意しました。予選では全国18施設からご応募いただきました。「誰かと相談しながらやるイメプリは初めてでとても楽しかった」というお声をたくさんいただきました。本選は上位3チーム(4施設)での決勝戦で、大ホール壇上でのリアルタイム読影、さらにフロアの先生方が見られる「本選出場者のリアルタイム視線追跡」、フロアからもリアルタイムで回答投稿可能、という新要素盛りだくさんで行いました。名古屋大学の先生方、特に、伊藤倫太郎先生、中道玲瑛先生、田岡俊昭先生とは何ヶ月も前からGoogle chatで企画を相談しながら作り上げ、大会初日と2日目には伊藤先生と中道先生にほぼ付きっきりでサポートしていただき実現に至りました。参加者の先生方から「とても楽しかった」「今後もこの形式が良い」といった嬉しいご感想をいただきました。みんなで作り上げていく感じがまるで学祭のようで楽しい(by. 中道先生)、素晴らしい機会をお与えいただき、関係者の先生方に感謝申し上げます。 私は教育講演1「脊髄・脊椎/変性・代謝疾患」で「脊髄腫瘍の画像診断2026」の講演も担当させていただきました。

シンポジウム演者:山岸陽助先生(大学院生)
【シンポジウム】 インフォマティクス 【演題名】 医用画像AIにおける機械学習コンペティションの役割と進化:MICCAI Challenges と Kaggle を中心に
【ひとこと】 講演する機会に恵まれ、大変光栄に思います。趣味と研究を兼ねて取り組んできた機械学習コンペティションの意義や、医用AI分野における発展との関わりについてお話ししました。 こうした取り組みは神経放射線領域でも活発に行われており、そこで培った視点や技術を今後の研究活動に活かしていきたいです。 ※編者註:山岸先生はkaggleで大変多くの上位入賞経験をお持ちです。

ポスター発表:濱田貴樹先生(専攻医)
【演題名】 ボクシング関連の疑われる透明中隔穿孔および外傷性孔脳症の一例 【演者】 濵田貴樹, 黒川遼, 辻杏歩, 吉井光司朗, 首藤篤史, 久保田暁, 黒川真理子, 佐竹渉, 阿部修 【概要】 透明中隔腔は健常成人でもしばしば認められる脳室の過剰腔であり、その多くは臨床的意義に乏しいです。一方、ボクサーなどプロ格闘家では透明中隔腔の頻度が高く、反復性頭部外傷との関連が示唆されています。今回我々は、錐体路障害と感覚障害を突然発症し、頭部MRIで、プロボクサーのキャリア開始前にはなかった透明中隔腔およびVerga腔がキャリア中に出現し、さらに外傷性孔脳症と考えられる脳実質・側脳室の変形を伴った症例を経験しました。当初は臨床的に神経内科疾患を考慮されていましたが、頭部画像検査から外傷性変化を疑うことができました。透明中隔穿孔と外傷性孔脳症の病態機序については、側脳室周囲で回転加速度が生じた場合、動こうとする脳実質と慣性でその場に留まろうとする脳脊髄液との間で剪断力が生じうることから、共通の力学的背景を有する可能性があると考えました。 【ひとこと】 このたび、名古屋で開催された神経放射線学会において、黒川先生のご指導のもと症例報告をポスター発表する機会をいただきました。発表にあたり多大なるご指導を賜りました黒川先生、阿部先生をはじめとする共同演者の先生方に心より御礼申し上げます。学会発表を通じて多くのご意見を頂戴し、大変貴重な経験となりました。このような機会をお与えいただいたことに深く感謝しております。