受賞演題

死後CTにおける心大血管内高吸収域の臨床的意義:重力性沈降と凝血塊、その生前病態の相関性解明 石田尚利1,2, 五ノ井渉2, 片山僚2, 白田剛2, 沖元斉正2, 丹生谷啓介2, 藤本幸多朗2, 黒川真理子2, 高橋(水木)真純2, 戌亥章平2, 阿部浩幸3, 折原隼一郎4, 齋藤和博1, 牛久哲男3, 阿部修2 1東京医科大学 放射線医学分野, 2東京大学 医学部 放射線医学教室, 3東京大学 医学部 人体病理学・病理診断学教室, 4東京医科大学 医療データサイエンス分野
概要
本研究は、死後CTで頻繁に認められる心大血管内の高吸収域(重力性沈降と凝血塊)が、生前の病態や検査値とどう結びつくかを前向きに検証しました。死後24時間以内に死後CTが施行された非外傷性の院内死亡114例を対象に、右・左心房、肺動脈、胸部大動脈での高吸収域を評価し、生前の各種データや病態とどう相関しているかを統計学的に明らかにすることを試みました。
主な結果として、重力性沈降は非肺炎性感染と独立して強く関連し、凝血塊は血小板数高値と独立して関連しました。すなわち、死後CTの形態所見で生前の炎症・凝固の状態を推定し得ることを示した点に意義があります。本研究は、死後CT所見を生前や死戦期の病態推定の補助線として活用できる可能性を示しました。
ひとことコメント(石田尚利先生)
本研究は、構想から約3年をかけて結実し、Japanese Journal of Radiology誌への掲載を経て、受賞へとつながりました。(日本医学放射線学会総会・秋季臨床大会では論文受理後1年以内の発表が可能です。)この度、満を持して臨んだ発表をご評価いただき、誠に光栄です。さらに、死後画像の研究チームとしても初の学会賞であり、ことさら嬉しく感じております。チームリーダーの五ノ井先生をはじめ、共に研究を支えてくださる皆様に心より感謝申し上げます。死後画像は院内死亡例・法医事例でのニーズが高まり、画像診断のサブスペシャリティのひとつとして認知されるようになってきたと思います。国内外の関連学会も活発化し、私たちも積極的に参加しています。ご関心のある方は、一緒にこの領域をさらに切り拓いていきましょう。