画像の経時変化を用いた研究
本研究室では、コンピュータ画像診断学/予防医学講座が行っている検診業務の画像や読影データを使用した、長期間の経年変化画像を用いた研究を行っています。
3T MRIなどの高性能医療機器を用い、無症状の同一人物に対して20年以上にわたり同一プロトコルで撮像された経時的データは、非常に貴重なものです。本研究室ではこの画像を利用して、画像に現れる経時的変化、加齢性変化、疾患リスク評価に関して、様々な研究・発表を行っています。
異常検知技術による差分検出
医用画像の経時的比較、すなわちある医用画像を同一患者の過去画像と比較し、新規の病変を検出する研究を行っています。経時的比較を自動的に行う際、一般的には「過去画像と今回画像の位置合わせをして、差分を求める」ことが行われます。しかし、このような差分画像には、位置合わせのずれや、あるいは病的でない経時変化など、さまざまな要因で偽陽性が生じえます。
本研究では深層異常検知技術に基づき、医学的に意味のある変化のみを強調・検出する手法を開発しています。
以下の図において、左の今回PET画像では頚部の真病変 (▶) のほかに、肝や心筋などの正常臓器にも多数の生理的集積が描出されています。中央の単純な差分画像においても、真病変のほかに偽陽性として心筋や尿路も描出されてしまっています (→)。右の提案手法では真病変のみが描出できているのが分かります。

CT・MRI画像の深層学習による特徴抽出・分析
大規模腹部MRIデータの膵臓セグメンテーションモデルに関する基礎的な定量分析を行っています。この研究をベースとして、微視的な膵ボリュームの経時的変化の分析に取り組み、臨床に有用な知見の抽出を目指しています。

生理的な脳萎縮の経年的解析
認知症のない成人653人を最長15年間追跡し、定期的な脳MRIと認知検査を組み合わせ、個人単位で脳構造の加齢変化を精密にモデリングした研究です。解析の結果、灰白質や白質の萎縮、脳脊髄液腔の拡大など、部位ごとに異なる加齢パターンが確認され、これらが加齢とともにどのように進行するのかが明らかになりました。
無症状の成人に対するこうした「正常加齢」の経過を明確にすることで、アルツハイマー病などの神経変性疾患の早期発見や予防介入の指標づくりにつながることが期待されます。
文献
- Fujita S, Mori S, Onda K, et al. Characterization of Brain Volume Changes in Aging Individuals With Normal Cognition Using Serial Magnetic Resonance Imaging. JAMA Netw Open. 2023;6(6):e2318153. Published 2023 Jun 1. doi:10.1001/jamanetworkopen.2023.18153
CT-based Biological Age
Computed tomography (CT) enables in situ, organ-level quantification of body composition changes that reflect systemic aging, yet systematically mining these age-related signals remains a major challenge.
To address this, we aim to develop a CT-based biological-age foundation model by exploring multiple methodological pathways, including multi-organ body composition quantification and large language model (LLM)–assisted modeling. This foundation model is expected to enable robust estimation of biological age and prediction of future age-related disease risk. Ultimately, it may provide a scalable and generalizable framework for integrating medical imaging into population-level aging research and precision health applications.
